──お二人の活動について教えてください。
池井戸:私は岩手県釜石市で活動しています。ミッションが特に決まっていない状態からスタートしており、「地域の宝を発掘し、磨いて広めていこう」を主軸に、割と幅広くいろいろなことをやらせていただいています。
たとえば、地域コンセプトの定義付けや観光サイトの制作、理念作りなど。最近は津田商店様という創業90年の水産加工業者と一緒に、地域の新しいブランド作りに取り組んでいます。津田商店様との取り組みのきっかけは、地域で開いたマーケティングセミナーにいただいた問い合わせでした。津田商店様は学校給食で使われる煮魚などの水産加工品を50年作っている会社なのですが、それ以外にも販路を拡大しようとされていたんですね。
そこで、この魚の勝ち筋を見つけようと思い、いろいろな方へのヒアリングを開始しました。営業社員さん、工場長、工場の課長、役員、異なる部署、役職の方に話を聞いたところ、「うちのお魚はおいしいんですよ」「子どものためにかなりこだわって作っています」と強い思いが共通していることがわかりました。その思いを受けて、「これはBtoCで売れると思うので、一緒にやってみませんか?」と提案し、一般消費者向けのECサイトを立ち上げることにしたんです。
梅澤:ゴールを決めていたわけではなく、あくまでも関係者にヒアリングをしたことで方向転換に至ったんですね。もうサイトはできているんですか?
池井戸:できました。22年7月から動き始め、23年8月にD2Cブランド「子どもようおさなかさん」のECサイトをオープンしました。10月にはお魚のギフトを作りました。釜石といえば海鮮で、「魚の町 釜石」と言っているくらいなんですが、そんな町らしさが表れている新しい贈りものができたかなという想いです。
こどもようおさかなさん公式HP(https://shop-osakana-tsudashouten.jp/)
梅澤:私は自分の地元でもある島根県雲南市で活動しています。ミッションは「ソーシャルチャレンジバレーの強化促進」。雲南市は「日本一チャレンジに”やさしい”まちづくり」を掲げ、「チャレンジ」の推進を条例にも掲げている変わった自治体です。いい意味で自治体が介入しすぎず、地域の主体者になり得る住民のチャレンジを応援するというスタンスで、10年以上チャレンジを軸にした町づくりを推進してきたという経緯があります。
この取り組みの背景には、東京23区と同じくらいの面積に人口3.5万人しかいないという事情があります。行政機能だけでは地域運営が難しいからこそ、行政に頼らず住民が主体となった地域を作ろうとしているんです。釜石市と異なるのは、雲南市は地域活性化起業人制度の協定に加えて、企業チャレンジという独自協定も結んでいるところですね。
池井戸:どういう制度なんですか?
梅澤:ソウルドアウトのような市内外の民間企業が地域に入って行う、地域の課題解決に繋がる、新規事業開発や新規商品開発の活動を支援する制度です。
私の取り組みの大枠は、様々な角度からチャレンジを促進していくこと。地域の担い手をデジタルを通じて増やすことを主軸に、民間出身であることを生かし、市内外の人々の繋がりを作る企画や情報発信、都市部の民間企業と雲南市との連携サポート、市内の企業や個人のデジタル活用支援、等に取り組んでおります。
その中でも最も注力しているのは、デジ×チャレ(※)ですね。簡単に説明すると、雲南市でデジタル人材を育成し、ゆくゆくは就業支援まで行う人材育成プログラムです。雲南市には高校卒業後に通う専門学校や大学がなく、若者が流出してしまうという課題があります。卒業後に戻ってきたいと思っても、製造業メインで雇用のバリエーションが狭いんですね。
雲南市では各高校にNPO等の民間が入りキャリア教育をしています。意志ある優秀な若者が育つ環境は整っているんですが、雇用先がないと育てた人材がみんな外に出ていってしまいます。そのため、リモートワークでも活躍の場が広いデジタルスキルを習得できる環境が必要なのではと考え、デジ×チャレ事業を行っています。2023年から市の皆さんと連携し、事業の企画から推進してきまして、これまで2期のプログラムを実施しました。市としては初めての取り組みでしたが、毎回、募集枠に対してほぼ満席~多い時は3倍以上の応募があり、一定の手ごたえを感じています。また、他の地域からもお問い合わせをいただくことが増え、同じ課題を抱えている協力できそうな地域が全国に多く存在することも分かりました。
池井戸:プログラムは有償・無償どちらなんですか?
梅澤:やる気のある方に参加いただき、最後までコミットいただくためにも、有償にしています。それでも応募が多く、30代をメインに20代、40代と幅広い受講生がいます。柔軟な働き方ができるため女性や子育て層、また移住に興味がある受講生も多いので、人口増にもつなげられるのではないかと期待しています。ここから都市部企業への人材紹介につなげ、「日本一チャレンジに”やさしい”まち」を掲げる雲南市で、日々頑張ってチャレンジしている”人の魅力”を軸に、市外からの収入を獲得し地域内にお金を流せる仕組みを作れないかと取り組んでいるところです。
※2023年12月にリリース配信した「デジチャレ」第2弾の募集ニュース
https://www.sold-out.co.jp/news/topic_20231204