急成長を遂げた裏にあった組織づくり。顧客至上主義を浸透させ、業界シェアNo.1を実現|株式会社出前館(旧:夢の街創造委員会株式会社)

スペシャル対談
2019.04.01
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インターネットを使った出前サービス「出前館」を運営する、ジャスダック上場企業の株式会社出前館(旧:夢の街創造委員会株式会社)。ソウルドアウトは2018年から、法人営業のコンサルティングや新規ユーザー獲得のためのプロモーション支援などを通じ、成長を支援しています。今回は、同社の急成長を成し遂げた代表取締役社長の中村利江さんに、経営者になるまでの経緯や経営者として大切にしていること、そして今後の展望について、ソウルドアウト株式会社執行役員の北川共史がお話を伺いました。

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中村 利江(なかむら りえ)
株式会社出前館(旧:夢の街創造委員会株式会社) 代表取締役社長
北川 共史(きたがわ ともふみ)
ソウルドアウト株式会社 執行役員

見い出した、出前館のビジネスモデルの可能性

北川:まず、創業期のお話から伺えればと思います。中村社長は、もともと株式会社出前館(旧:夢の街創造委員会株式会社)の外部コンサルタントだったとお聞きしました。どのような経緯で社長に就任されたのでしょうか

中村:私は以前、持ち帰り弁当のチェーン店を運営する会社で、デリバリー事業の責任者をしていました。その時出前館のことを知って、外部コンサルタントとして最初に参画したんです。株式会社出前館(旧:夢の街創造委員会株式会社)とはその時からの付き合いですね。

当時、私は思春期になった子どもをもう少し見てあげたいと思ってその会社を退職し、独立して小さなマーケティングの会社を作りました。そのタイミングで、株式会社出前館(旧:夢の街創造委員会株式会社)から「良ければ役員として手伝ってください」という話があったんです。

その時の出前館は、売上が月2万円くらいしかない状態。しかし、ビジネスモデルを見て可能性を感じました。インフラビジネスなので、今は2万かもしれないけれど将来は2千万になるかもしれないし200億になるかもしれない。そう考えて役員を引き受けました。

まずは経営再建の資金調達のために、ベンチャービジネスコンテストに応募しました。応募するために必要だった事業計画や資本政策をつくり、プレゼンもしました。結果、無事に資本を得てここからというタイミングで、当時の社長から次期社長就任のお話をいただいたんです。

自分の会社でも初年度から黒字は出していたし、自分の時間を作りたくて独立したのに、ベンチャーの社長になったら忙しくなるだろうと思い悩みました。でも、同時にこんなチャンスはないとも感じたんです。自分でやっていくよりもずっと大きな可能性を追いかけられることに魅力を感じて、社長を引き受けることにしました。

 

顧客至上主義の組織に再編

北川:実際に社長に就いてからは、どんな形で経営改革を進めていったんですか。

中村出前館のビジネスモデルには可能性を感じていましたが、全部作り直さないといけないとも考えていました。まず取り組んだのは、会社に「顧客至上主義」の価値観を浸透させること。

例えばすごくわかりやすい話でいうと、注文方法の変更ですね。当時は、大手企業のデリバリーサービスと同じ、注文をメールで受ける仕組みを採用していました。

ただ、私たちが扱っている商材は出前ですから、飲食店さんは30分で料理を作って届けなければいけません。そのためには、すぐに注文に気づいていただく必要がある。当時はスマートフォンもありませんでしたから、飲食店さんは基本的にメールなんか見ていなかったんですよね。私は前職で飲食の現場を見ていたので、水や油を使う中でパソコンを立ち上げてメールをチェックするなんてありえないと思っていました。

そこで、飲食店さんが使いやすいよう、注文方法をFAXと電話に変えました。これが大きな起点だったのかなと思います。私たちはインターネットサービスをうたっていますが、全部ITにする必要はありません。相手の立場に立って、最も便利な方法を作ることが一番大事だと考えています。

北川:現場を知っていたからこそできたんですね。社長になられてから、新体制はすぐに機能したんですか。

中村組織も新しく変えました。「私は給料を社員の誰よりも安くしました」と宣言し、「でも今までで一番働くと思うので、それでも嫌な人は考えてください」と伝えましたね。自分も家族には内緒で月給10万で働いていました。これによって40人いた社員のほとんどが入れ替わり、少人数から再スタートしました。

そこからは、日々の積み重ねで少しずつ変わっていた形ですね。競合も増えましたが、それによって成長途上の市場の認知度が上がるのはいいことだと思っていました。認知度が上がれば、次はサービスの比較になる。店舗数や配達のクオリティに関して絶対に負けない仕組みを作っておけば、最終的には勝てると考えていました。

 

優先順位を可視化し、営業全体を底上げ

北川:私たちソウルドアウトが中村さんに最初にお会いしたのは、株式会社出前館(旧:夢の街創造委員会株式会社)さんに営業の研修をさせていただいた時でした。中村さんが過去にソウルドアウトの親会社であるオプトの取締役をされていたので、オプトグループで言えば密接な関係にはありましたが、どうしてあの時ご依頼いただけたのでしょうか。

中村会社は、社長の情熱やパワーである程度までは進んで行きます。しかしその先へ行って水平展開するときは、各営業マンの質をある程度揃えていく必要がある。うちも営業マンが増えて、全体の底上げが必要な時期だったので営業の研修をお願いしました。

社員には、特に優先順位のつけ方を身につけてほしいと思っていましたね。私は追加で何かするよりも、時代とともに「やめる」べきことを決めるのが重要だと考えています。何をやめるべきか判断できるよう、社員には優先順位をつけて業務を整理できるようになってほしいと思っていました。私から言うより、その辺りが上手な北川さんから言ってもらった方が良いと思って。

それから、ソウルドアウトさんはオプトグループの中でも一番元気な会社だと聞いていたし、中小・ベンチャー企業を専門に回られているのでしっくりくるかなと思ったんです。うちは飲食店のオーナーさんと直接話をすることが多いですから。大手さんではなくて、構えず腹を割って話せるソウルドアウトさんのスタイルが良いと思ったんですよね。

北川:ありがとうございます。3か月間のプログラムを組んで並走させていただいて、株式会社出前館(旧:夢の街創造委員会株式会社)さんは社員さんの個々の能力や会社へのロイヤリティがすごく高いと感じました。ただ、どんなスキルを身に付けるべきなのか、何にフォーカスすべきなのかの優先順位が営業マンによってバラバラな印象がありましたね。

そこでまず、営業現場のみなさんと一緒に行動して、何に時間を使っているのかを見たり、毎週会議に参加したりしてどんなスキルがあればスーパー営業マンになれるのかを見極めました。必要な能力を言語化して可視化できるようにすることから始めて、足りない能力を重点的に強化していきました。

中村:実際に入っていただいて、営業に変化を感じました。できる営業マンはなかなかノウハウを共有しないので、これまでは優先順位のつけ方を含め、営業の質にばらつきがあったんです。しかし研修後にはチーム内でノウハウを共有しようという声が出てきた。それが主流になっていったので、すごくよかったなと思いますね。

北川マネジメントチームに現場の課題をどんどん共有していこうという風土ができたり、これまで使っていた資料を一新したりするような動きも出て、受注率も上がりました。

営業マンのスキルや目標・業務における優先順位がバラバラというのは、急成長しているベンチャー企業にありがちなことです。実際、ソウルドアウトでも同じことが起きていました。営業先一社一社に科学的にアプローチするため、社内で営業が身につけるべきスキルの優先順位を決めていたんです。設立時からそういったノウハウが蓄積できていたことが支援につながりました。僕たちはお客様の自立自走支援を掲げていますので、自社でやっていたことが広告以外の領域でお客様の役に立ったというのは、僕たちにとっても大きな経験でした。

中村:研修後は、広告代理店としても入っていただきました。中小・ベンチャー企業のことをよくお分かりいただいているので、うちとお取引のある飲食店さんの気持ちもよくお分かりいただいていると思います。

 

win-winのビジネスモデルを生み出し続ける会社に

北川:会社を急成長させる過程では、経営者としてどんなことを重視されてきましたか。

中村会社の中の一番のエンジンであることですね。やっぱり、社長が苦しそうだったり文句を言ったりしたら次の人がついてくるわけないじゃないですか。基本的に、何かあってもその日のうちに解消するようにしています。

北川:社内のいろいろな方とコミュニケーションを取らせていただいていますが、皆さん口を揃えて言われるのが、「中村さんは無欲だ」と。事業成長のためにこんなに全てを捧げられるのは、本当にすごいと思うんですよ。

中村:社長になってからは、物欲がほとんどないですね。一番のプライオリティが事業成長、イコール社員の給料をいかにあげるか、ですから。上場企業の社長をやるっていうことは、もう個人はないんです。社員を雇うからには会社が一番。実家が商売をやっていたので、商売とはそういうものだ、という考え方が小さい頃からあったのかもしれません。

私が悲しいのは、やっている事業がうまくいかないこと。絶対世の中の役に立つし、飲食店さんに喜んでもらえることなのに拒否されるようなことがあったら、それが一番悲しいです。事業が前に進むことが何よりのご褒美なので、他には本当に何もいらないな。

北川:社員の皆さんにこれを一番に伝えたいですね。最後に、今後の展望を聞かせていただけますか。

中村直近のテーマは人材育成ですね。会社は、もう私一人で経営できる大きさではなくなってきているので、経営陣をつくるというのが一番大きなテーマ。なかなか純粋に会社の事業成長だけを考えているような無欲な人はいないですが、原動力は「お金が欲しい」という金銭欲でも、「新しい事業を生み出したい」という事業欲でもいいと思っています。そのためにしっかり会社にプライオリティを置いてくれる人を経営陣にしたいですね。

今後は、出前館のように本当にwin-winなモデルのビジネスをどんどん生み出していける会社にしたいと思っています。新しいビジネスモデルの事業ができて、それをやる社長がどんどん生まれていくのが理想ですね。ただ、今は出前館に注力しなければいけない時期なので、まずは出前館を業界のリーディングカンパニーとして、デリバリー市場自体の拡大に繋げていきます。

北川:我々も、成長スピードにしっかり追いつけるような支援をしていきたいと思います。

 

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